硝酸性窒素(NO3-N)処理剤バチルエース
当社では、硫黄カルシウム系無機質剤と硫黄酸化脱窒菌を組み合わせた硝酸性窒素の生物処理システムを提案しています。
本システムは、平成13年~14年度の環境省環境技術開発等推進事業に採択され、静岡県内の3箇所での現地実証浄化を実現しています。これらの技術開発経緯を踏まえ、現在あらゆる分野における排水中脱窒システムとして着目されています。
バチルエース剤
特徴
- バチルエースは、硫黄をエネルギー源とする固体栄養法のため、メタノール添加等の制御システムおよび後曝気処理等の付帯設備が不要です
- 装置の構造が簡素であり、余剰汚泥の発生量が極めて少ないため、維持管理が容易です
- pH緩衝機能に優れ、海水条件でも使用可能です。また、15℃以下でも処理可能です
バチルエースと硫黄酸化脱窒細菌による脱窒の原理
本システムの原理は、硫黄酸化脱窒細菌による硝酸性窒素処理であり、いわゆる一般土壌菌を用いる生物学的処理です。本システムでは、この硫黄酸化脱窒菌とバチルエース(硫黄カルシウム剤)を用いて硝酸性窒素を処理します。
水中の硝酸イオン(NO3-)は、硫黄酸化脱窒細菌(Thiobacillus denitrificans)によってとり込まれ、硫黄酸化脱窒細菌は硝酸イオンの中の酸素で呼吸をし、不要な窒素(NO3-N)を窒素ガス(N2)として排気します。これが本生物処理における硝酸性窒素処理の基本メカニズムとなります。なおその際、硫黄酸化脱窒細菌は硫黄を取り込んで硫酸イオン(SO42-)を排出しますが、この時に硫黄と一緒に配合されているカルシウム(Ca)がこの硫酸イオンと結合して硫酸カルシウム(いわゆる石膏(CaSO4))を形成し、処理水の酸性化を防止することになります。
なお、硫黄/カルシウム系無機質材上における硫黄酸化脱窒反応は、現地実証サイトにおける採取データとその反応解析より、KOENIG&LIUの式とよく一致することが確認されています。
1.06NO3-+1.11S+0.3CO2+0.785H2O → 0.5N2+1.11SO42-+1.16H++0.06C5H7O2N
実際に硝酸性窒素処理を実施した硫黄カルシウム剤の表面を電子顕微鏡で観察すると、長さ2~3μm程度の硫黄酸化細菌を確認することができます(図2)。この硫黄酸化細菌が硫黄カルシウム剤の硫黄を食べながらNO3をN2へ変換してくれるのです。
図1.硫黄脱窒反応のメカニズム
図2.硫黄酸化脱窒細菌
工業系排水の高度脱窒浄化例
平成16年度からの第五次水質総量規制の本格施行開始を踏まえ、各種工業排水を対象した評価検討を進めています。
当社では簡易なめっき工場排水やステンレス酸洗排水等の金属表面処理、触媒製造排水などの硝酸性窒素処理装置の設計評価に取り組んでいます。
工場内に処理設備設置の場所がない(物理的な装置設置場所が制約される・・など)、或いは新たな水処理のための専用要員は設置しがたい、多額の償却負担が発生する高額設備の導入は避けたい、などの背景を有する顧客に対して多くの評価検討が進められています。
装置構成は図-3のように単純で、バチルエースの充填槽に下部から排水を導入して上部から処理水を取り出す、、上向流で処理します。
めっき工場排水処理(SCタイプ)
- バチルエース4トン充填
- 鋼製5m3槽
- 設計排水量:15m3/日
- 設計能力:NO3-N 60mg/1→15mg/1以下
産廃処理場湧水処理(SCタイプ)
- バチルエース30トン充填
- 鋼製40m3槽
- 設計排水量:185m3/日
- 設計能力NO3-N 80mg/l→30mg/l以下
食肉工業団地排水処理(SCタイプ)
- バチルエース90トン充填
- 鋼製35m3槽×3基並列
- 設計排水量:3300m3/日
- 設計能力:NO3-N 30mg/l→17mg/l以下
農業・畜産系排水の高度脱窒浄化例
一般の畜産浄化槽の高度処理(硝酸性窒素処理)として、浄化槽出口の放流排水を高度処理する例があります。畜産排水の場合、前段の固形分処理やアンモニア処理(硝化)が十分進んでいることが重要です。前段処理がしっかりと行われていれば、バチルエースによるNO3-N処理は容易に実施できます。
右の写真は北関東の豚舎に設置したバチルエース脱窒処理槽です。 既存の排水処理設備の後段に高度処理用 として設置したものです。
- バチルエース2トン充填
- 鋼製3m3槽
- 設計排水量:7m3/日
- 処理能力:NO3-N 500mg/l→100mg/l
地下水&湧水浄化例
地下水、湧水の実証処理例としては、新日鉄住金化学株式会社、独立行政法人農業技術研究機構野菜茶業研究所及び静岡県野菜茶業試験場の3者が、平成13年度~14年度に実施した環境省の環境開発推進事業の研究事例があります。これは、静岡県内の3サイトに小規模分散型硫黄酸化脱窒装置を設置し、農業由来の地下水、湧水及び湖沼の硝酸性窒素処理に取り組んだものです。
以下、実証サイトごとの施工例を参照下さい。
Tサイト
300m×500m程度の広さ(深さは不明)のT池に流れ込む河川水(茶園下流池)を用いて処理実証実験を実施しました。T池は茶園硝酸汚染の代表的な池として過去に何度か新聞等で取り上げられています。水採取した川はT池への明確な流入源です。この実証装置では、硫黄カルシウム剤5トンを充填(最大充填量7トン)、日量30~50トンの排水処理を目標とし、充填槽はステンレス製、また別途水槽を設置して処理後水での魚飼育実証用としました(T池では既に魚は死滅)
Cサイト
20m×40m×深さは1~2m程度の小規模なC池(茶園に囲まれたため池)にて処理実証実験を実施しました。この池は明確な流入源泉を持ちません。この実証装置では、硫黄カルシウム剤1トンを充填(最大充填量1.5トン)、日量3トン程度を処理目標とし、太陽電池設置仕様、汚染池を藻が生えて魚が住める環境に修復するための処理装置としての低コスト性を精査しました。